式神とは?

式神(しきがみ)とは、陰陽師が使役する神様や鬼、陰陽師のエネルギーを塊にしたもののことです。

式神には、陰陽師以外には目に見えないものもあれば、人形に霊力を込めて人の目に見えるようにしたものもあります。主に式神は、人を守護することに使います。中には、身の回りの世話係りとして使っていた陰陽師がいたという話も残っています。

本記事では、日本古来から存在する「式神」の役割や陰陽師との関係性などについて解説していきます。では、詳しく見ていきましょう。


式神に関する基礎知識

  1. 式神の読み方
  2. 式神は「しきがみ」と読むのが一般的ですが、文献によっては「式の神(しきのかみ)」「式鬼(しき)」とも言われています。式神の「式」は「使う、用いる」という意味であり、つまり式神とは「神を使う」ということをいうのです。
  3. 式神と陰陽師
  4. 式神に宿る力は、通常の人の目には見えないものです。陰陽師もその力を呼びだすのには集中と時間がかかります。そのため、必要なときにすぐ呼び出せるように、和紙の札に納めていました。その力の宿った和紙の札を式神と言うのです。

    式神は動物や神獣、人型など、人にとってイメージしやすい形であるほうが扱いやすいといいます。陰陽師が分かりやすい形として呼び出せた式神は、掃除や雑事をさせられることもあったといわれています。
  5. 式神の種類
  6. 式神には思業式神、擬人式神、悪行罰示神の3種類があります。
    思業式神 光や火などのエネルギーをもとに陰陽師の思念によって作られた式神のこと
    擬人式神 紙や藁人形に霊力を込めたもの
    悪行罰示神 悪行を働いた神が陰陽師によって倒され、従属する形となった式神のこと
式神と陰陽師との関係
  1. 陰陽師とは?
  2. 陰陽師とは、天文や暦をもとに、時間や方角の吉凶を占う人のことを指します。陰陽寮という国立の役所に勤める人に与えられた役職名が「陰陽師」であり、吉凶の占いだけではなく祈祷や暦づくり、呪術なども行っていました。
  3. 安倍晴明という陰陽師について
  4. 陰陽師として有名な「安倍晴明(あべのせいめい)」は、優れた知識量と能力により、非常に大きい影響力を持つ人物でした。

    その力は、十二天将と呼ばれる強力な式神を使いこなすほどだったそうです。式神に身の回りの世話をさせたというのもこの人物の逸話から来るものです。
式神の役割とは?
  1. 人や家を守護する
  2. 式神は、人や家に災いをもたらすものから守護するという役目があります。

    式神は、人の心にある善悪を見分けられる存在です。そのため、式神が邪気を祓うときは陰陽師の判断によるものではなく、式神が善行と悪行を判断して悪いものを追い払います。つまり、陰陽師がそばにいなくても、対象者を守ることができるということです。
  3. 身の回りの世話
  4. 吉凶の占いに留まらない陰陽師が使う式神は、人に憑依させて厄災をもたらすこともあります。ただ人や家を災いから守るだけでなく、攻撃する側に回ることもあるということです。

    例えば、式神の中には災いをもたらす凶神が宿っているものがあります。経済的に悪影響を与えるものや感情を揺さぶるものなど、与えたい害に応じて派遣していたといいます。
  5. 身の回りの世話
  6. 安倍晴明は、式神に身の回りの世話を任せていたといわれています。掃除や雑事だけではなく、伝言役や留守番なども任されていたそうです。このように、ちょっとした命令にも従うということは、それだけ安倍晴明の力が強かったということなのでしょう。
式神「十二天将」とは?

十二天将とは、安倍晴明が使役していたとされる強力な12体の式神のことです。それぞれ違う力を持っており、6の吉将、6の凶将という力によって神の吉凶が分けられていました。

十二天将の中には、歴史のある神の名を持つものや人の名を持つものがいます。では、どのような神がいるのか、それぞれ見ていきましょう。

  1. 騰蛇(とうだ)
  2. 火をまとった大蛇。龍のような姿で描かれることもある。
    性質 陰、凶将
    五行
    能力 驚愕、恐怖、畏れ
  3. 朱雀(すざく)
  4. 南方を守る守護獣。鶏や雉の姿で描かれることが多い。
    性質 陽、凶将
    五行
    能力 学問的知恵、華やかさ、火
  5. 六合(りくごう)
  6. はっきりとした姿かたちは伝わっていない。平和をもたらす式神。
    性質 陰、吉将
    五行
    能力 調和、平和
  7. 勾陳(こうちん)
  8. 黄金の蛇。京の都の中心を守護していた。
    性質 陽、凶将
    五行
    能力 戦闘、憤怒、不動
  9. 青龍(せいりゅう)
  10. 東方を守る守護獣。青い龍の姿をしている。
    性質 陽、吉将
    五行
    能力 商売繁盛、発展
  11. 貴人(きじん)
  12. 十二天将における主神。天一神ともいう。
    性質 陰、吉将
    五行
    能力 財産、幸福、宇宙
  13. 天后(てんこう)
  14. 女神。元人間が神になったといわれている。
    性質 陰、吉将
    五行
    能力 治癒、水
  15. 大陰(たいおん)
  16. 見た目は少女の姿だが、本当の姿は老婆。
    性質 陰、吉将
    五行
    能力 隠匿、知恵
  17. 玄武(げんぶ)
  18. 北方を守る守護獣。亀と蛇が合わさった姿。
    性質 陽、凶将
    五行
    能力 窃盗、邪悪、不誠実
  19. 太裳(たいじょう)
  20. 高級文官として神の右腕であった。とても穏やかな善神。
    性質 陰、吉将
    五行
    能力 忍耐、威厳、不変性
  21. 白虎(びゃっこ)
  22. 西方を守る守護獣。白い虎の姿をしている。
    性質 陽、凶将
    五行
    能力 病、疾患、争い、死
  23. 天空(てんくう)
  24. 自由や芸術も司る陽でもあり、陰でもある存在。
    性質 陽、凶将
    五行
    能力 嘘、不信、虚無、霧、黄砂
まとめ

現代にも存在する陰陽師たちは、依頼人の身を守るために式神を用いることもあるようです。式神はあらゆるところに存在するエネルギーを集めたもので、身につけていると次第にエネルギーが減っていく消耗品なのだとか。

まだまだ式神は奥が深いですね。

その他のおすすめコラム