アダルトチルドレン(AC)とは? 特徴と原因、回復方法を解説
アダルトチルドレン(AC)とは?
アダルトチルドレン(Adult Children)とは、問題のある家庭環境の中育ち、「自分の感情との折り合いが付けられない」「対人関係に苦手意識がある」などの生きづらさを抱えている人のことを言います。医学的な診断名ではありませんが、生い立ちを振り返って自分自身についての理解を深めるための概念として使われています。

「アダルトチルドレンとは大人になりきれていない子どものような成人のこと」という解釈は正確なものではありません。アダルトチルドレンという言葉の始まりは、アメリカで言及された「アルコール依存の親を持つ子ども(Children of Alcoholism)です。そのような子どもたちが大人になって生きづらさを感じていることから「大人になったアルコール依存の親を持つ子ども(Adult Children of Alcoholism)」として注目され、略称としてアダルトチルドレン(Adult Children)になったと言います。

今ではアルコール依存症の親に限らず虐待やネグレクトなどをする親をのもとで育った人全般が対象となり広く使われています。具体的なアダルトチルドレンの特徴について見ていきましょう。
アダルトチルドレンの特徴14つ
  1. 自分の考えや行動に確信が持てない
  2. 物事を最初から最後までやり遂げることが困難
  3. 無理をしてでも嘘を貫こうとする
  4. 非常に自虐的である
  5. 楽しいという感情を持つことが難しい
  6. まじめすぎる
  7. 親密な関係をなかなか築けない
  8. 不測の事態に過剰に反応する
  9. いつも他者からの肯定を必要としている
  10. 自分は人とは違うと感じている
  11. 責任をとりすぎる、もしくは責任感がなさすぎる
  12. 過剰な忠実心がある
  13. 衝動的である
  14. 柔軟な行動をとれない

こういった性質をもつことから、うつ病などの精神障害やアルコール・ギャンブル・人への依存・共依存に悩まされることもあります。

共依存とは、相手を憎んだり疎ましく思っていたりしても、相手がいないことにと寂しさを感じ離れることのできない間柄のことです。アダルトチルドレンは、自分がいないと生きていけないような人を世話することで充実感を覚えると良います。
アダルトチルドレンになる原因
アダルトチルドレンとして生きづらさを感じる主な原因は、「機能不全家族」だとされています。
子どもを育てる機能を持たない家庭のことを「機能不全家族」と言います。機能不全とされる親のの例は以下の通りです。

肉体的・言動的暴力をふるう
性的虐待をする
両親のいさかいが絶えない
アルコール依存症である
過剰に子どもに期待をかける、もしくは甘やかす
仕事ばかりで子どもの面倒は後回し

こういった家庭環境にある子どもは、親の愚痴を聞く役に徹したり、親に変わって妹や弟の面倒をみたり「良い子」になろうとします。「良い子でなければ捨てられる」「親の言うことをちゃんと聞かねば」といった考えが、自分の感情を過度に押さえつけ、自分で感情をコントロールするのが難しくさせます。感情コントロール苦手としているのであれば、人間関係に苦手意識を抱いたり人とは違うと感じたりするのは無理からぬことでしょう。
アダルトチルドレン6タイプ
アダルトチルドレンには様々なタイプが存在しています。それぞれ詳しく見ていきましょう。

1. 英雄タイプ(ヒーロー)
英雄タイプは、勉強や習い事など親の期待に応えるために行動します。周囲からは頑張り屋、まじめな子として見られていることがほとんどです。その行動原理は自分の目標を達成させるためではなく、親に叱られないため・親に褒められるためといったものです。結果が得られなかったり、叱られたりするとひどく落ち込み、心が折れてしまう傾向にあります。


2. いけにえタイプ(スケープゴート)
いけにえタイプは、あえて悪い素行をとることで家族からの負の感情を一手に引き受けようとします。暴力などの犯罪行動、極端に悪い成績をとるなど「悪役」となり、家族の不仲は自分のせいであるという幻想を抱かせ家族の破綻を防ぐのが目的です。


3. 世話焼きタイプ(ケアテイカー)
世話焼きタイプは、家族の世話を行い親の代わりになろうと行動します。家事や兄弟・祖父母の面倒などを引き受けて、家庭が崩れるのを防ごうとします。家庭内のことを世話することで褒められる・感謝されると言った見返りを求めており、世話というもの自体に依存する傾向があります。社会に出るとおせっかいな人、過干渉な親として扱われやすいのはこのタイプです。


4. 道化師タイプ(クラウン)
道化師タイプは、ひょうきんに振舞うことで家庭を明るくしようとします。冗談を言ったり、おどけて見せたりと明るく振舞いますが、あくまで役としての立ち回りであり心の底から明るいとは限りません。常に人の顔色をうかがい生活をしています。自分の不調や期限の悪さを見せることはなかなかありません。


5. 気配を断つタイプ(ロスト・ワン)
気配を断つタイプは、放っておかれることに慣れてしまい注目されることに違和感を覚えます。そのため、自分から目立たないように行動したり、流れるまま行動する世捨て人的な生き方をしたりします。「自分のことなんて皆どうでもいいんだ」というような感覚があり、自己主張をほとんどしません。


6. 支え役タイプ(イネイブラー)
支え役タイプは、自己犠牲の精神によって献身的に親に付き従います。愚痴を聞いたり、アルコール依存症の親のためにお酒を用意したり、相手の嗜好に付き合います。この献身は相手の問題行動を助長させるものですが、相手に必要とされない自分に価値を見いだせなくなっている支え役タイプにとっては都合のいいものなのです。共依存の関係を築きやすいのはこのタイプです。
アダルトチルドレンの回復方法
1. 過去に向き合う
自分が今なぜこんな性質を持っているのか、その原因について理解を深めてみましょう。未だ生きづらさを克服できていない人も、原因を理解しているかしていないかではその辛さと向き合い方が異なります。

直視するのが難しい人は、今まで家族への不満や感情を紙に書き起こしてみる方法もあります。過去、得られなかったもの、失くしてしまったものを認識し、現状回復への手掛かりを探してみてください。

2. カウンセリングを受ける
他者に話を聞いてもらうことで自分を見つめ直すきっかけを得ることが出来ます。わざわざ精神科やセラピーに通うのには抵抗があるという人も居るかと思いますが、知人や友人、恋人を頼って依存が深まることを避けるために専門家の力を借りることをおすすめします。自助グループに参加するという手もあります。

また、セラピスト・精神科医には生きるうえでの技能・知識をたくさん有しています。主張ができない、愛されないと悩んでいる人は、人とのコミュニケーションを上手にこなす方法を学びに行くのも良いでしょう。

3. 認知行動療法を試す
認知行動療法とは、物事の考え方を再検討し感情と行動に変化を与える精神療法です。考え方にも癖というものがあり、この癖を改善するとポジティブになったり思考がすっきりすると言います。簡単に取り組めるものはABC理論です。

ABC理論とは、Aが出来事、Bが信念、Cが結果を表し、このうちBを変えることで前向きになれるという方法です。

例えば、A「恋人に注意された」→B「私のことが嫌いになったからだ」→C「誰にも愛されないんだ」という思考をこのように変えてみます。A「恋人に注意された」→B「私のことを好きだからこその注意だ」→C「なんでも話し合える関係っていいな」このように、Bを変えることで前向きになれるのです。
アダルトチルドレンの人がすぐに取り組める生き方のコツ
1. 仕事
・業務を断れないときのコツ
嫌われることを恐れて頼まれた仕事を断ることが出来ないときに使える方法です。
頼まれたら反射的に引き受けるのを我慢し、「後ほど返答してもよろしいでしょうか」「上司と相談してから回答しても良いでしょうか」など時間を空けて回答するようにしてみましょう。

・仕事のできに自信を持てないときのコツ
任された仕事に自信が持てず責任感からストレスを抱えるときは、「まずは70点を目指す」という考えを持ってみましょう。70点のものを上司に提出・提案し、解決・今後する仕事の質の向上をはかるのです。そうすることで、完璧にこなさなければという考えに押しつぶされることなく、仕事において成長していけるでしょう。

2. 恋愛
・見放される不安に悩むときのコツ
「この人に見放されても他にも理解者は現れる」と思うようにしましょう。アダルトチルドレンは人に依存しやすいため、出会ったその人がこの世のすべてのような感覚に陥ってしまいます。しかし、どんなに気立ての良い人でも別れと出会いを繰り返します。嫌われたり見放されたりしても、もう大人ですから生きていくことはできるのです。不毛な自己犠牲をしているときは、「この人に認められなくても生きていける」と開き直ってみましょう。

3. 子育て
・教育するときのコツ
アダルトチルドレンの人は、自分の価値を子どもの人生からも見出そうとします。そのため、過剰に子どもの面倒をみたり、上手くいかないときに自分を責めてしまったりします。また、自分の親を見本に子育てをいてしまい、新たなアダルトチルドレンを生み出すこともあります。

そんなときは、周囲への相談して協力を仰ぐようにしましょう。子育ては非常に難しいものです。一人で抱え込まず、ときには子育て本を参考にしてみましょう。
まとめ
家庭環境によって生まれた考え方の癖がアダルトチルドレンの生きづらさの原因です。癖は改善していくことが可能です。一人で抱え込んでいる人は、思い切ってカウンセリングや自助グループを利用してみてはいかがでしょうか。
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